そこに立っていたのは凛子さんだった。
「凛子さん......」
「凛子......」
病室内が一気に静かになる。
「お前何しにきたんだ!」
「結姫にあんなにひどいことを言っといてよく来れたわね!どれだけ結姫が苦しんでたと思ってるの!」
大輝と良子が私をかばうようにベットの前に立った。
子どもたちはとてもおびえている。
「ごめんなさい......」
凛子さんは震える声で言うと私に向かって頭をさげた。
「それだけで許されると思ってるの!」
と今までに聞いたことのないような強い口調でつぼみが叫んだ。
「思ってない......」
「じゃあなんで......」
「ただ謝りたかったの...私はその子をとても苦しめてしまった...だから......」
凛子さんの涙が床に落ちる。
「顔をあげてください」
「結姫?」
彼女の顔は涙でくしゃくしゃになっていた。
「凛子さん、私はあなたが憎い」
再び彼女の目から涙がこぼれる。
「だけど、人を好きになると周りが見えなくなってしまう。私は凛子さんの気持ちがわかった」
「え......」
「だから......私はあなたを許します」
みんなが驚いたように私を見る。
「それでいいの?」
良子が私にそうたずねた。
ゆっくりとうなずく。
「ありがとう、結姫さん......」
「結姫って呼んで」
私は彼女に笑いかけていた。
「ありがとう、結姫......」
そう言って凛子さんは笑った。
私は首をふった。
「私のことも凛子でいいから......」
彼女は申し訳なさそうに、でもどこか照れ臭そうに言った。
「わかった、凛子」
2人で笑い合う。
みんなは驚いたまま固まっている。
それはそうだろう。
あんなにひどいことをした相手を簡単に許してしまったのだから。
本当は私が一番驚いているのだろう。
あんなに憎んでいたのに。
でも彼女をこんな風に彼女を笑顔で許すことができたのは柊馬のおかげだ。
隣を見ると柊馬は安心したと嬉しそうに笑っていた。
ありがとう......