それから私たちは人混みをかきわけながらみんなを探した。
すると「柊馬」と声がした。
「凛子」
柊馬が立ち止まり、声のした方を見た。
見るとそこにはとても綺麗な女の人が立っていた。
彼女は私たちを見ると
「そちらは彼女?」
と笑顔でたずねた。
「いや、友だちだよ」
柊馬はなんの戸惑いもなくこたえた。
その時、なぜか胸がズキンと痛んだ。
「そう」
彼女は繋いでいる手を見ながら低い声で言った。
私はゆっくりと繋いでいる手を離した。
すると柊馬はそれに気がついたのか「ああ......」そう言って手を離した。
「ねえ、私たちと一緒にまわらない?」
と彼女は明るい声で言った。
「そうね」
彼女と一緒に来ていた2人も話しかけてきた。
なんて返せば......
「いや、俺たちはみんなを探してるんだ。だからすまない」
柊馬は優しくこたえた。
「そう......」
彼女は落ち込んだように少し小さな声でつぶやいた。
申し訳ないな......
「ごめんなさ......」
私が謝ろうとすると
「あなたお名前は?」
と彼女は再び笑顔に戻り私にたずねた。
なんだかわからないけれどこの時の彼女の笑顔がとても怖く思えた。
「ねえ、」
「えっ」
いつのまにか目の前に彼女が立っていた。
「お名前は?」
「あ、藤井結姫です」
小さな声しか出ない。
「そう、よろしくね」
「よろしくお願いします.....」
彼女は笑っていた。
でも彼女の目は冷たく怖かった。
「じゃあね、また会いましょう」
そう言って彼女たちは人混みの中へ消えていった。