「柊馬はもういいの?」
私がそう聞くと彼はこちらを見て「疲れた」と笑った。
「あ、さぼり」
「みんなには内緒な」
と唇の前に人差し指をあてた。
さらに心臓の音が大きくなる。
これ以上大きくなったら聞こえちゃう……
私は深呼吸をした。
「結姫は花火好きか?」
と彼は私にたずねた。
花火……
私は小さな頃から入院していたため、あまり花火を見たことがなかった。
見たと言ってもテレビで見るのがほとんどだった。
「結姫?」
「あ、花火好きだよ」
まずい、ぼーっとしてた!
私は花火をちゃんと見たことがないなんて言えなかった。
「みんなで花火大会にみんなで行こうと思ってるんだ」
「そうなの!いいな~」
うらやましい。
みんなで行くなんて。
私も行きたい。
でも私はこの寂しいお城から出ることはできない。
「結姫も一緒に行こう」
「えっ」
柊馬の言葉に驚いた。
そんなことできないよ。
「でも私、病院から出られないんだよ?」
「それは俺たちがなんとかする」
「そんなの無理だよ」
本当は行きたい。
だけど病気がある限りどこへも行けない。