「あの……」

それから俺たちは中庭のベンチでぎこちない会話をした。

気がつくと空がオレンジ色に染まっていた。

「もう夕方ですね。空がオレンジ色だ」

立ちあがり空を眺めていた。

「きれいですね」

そうとなりで声がした。

ふととなりを見ると彼女と目が合った。

すると彼女はすぐに顔をそむけると

「そろそろ薬の時間なので部屋へ戻りますね」

そう言って彼女は戻ろうとした。

「藤白さん」

俺は無意識のうちに彼女の名前を呼んでいた。

彼女は不思議そうにこちらを見ている。

「明日も、ここへ来てもいいですか?」

そうたずねていた。

「はい」とだけこたえると彼女は戻って行った。

なぜこんなことを聞いたのだろう。

ただ彼女のことを知りたかった。