病室へ入ると明子さんとつぼみと何人かの子どもたちがにやにやしながらこちらを見ている。

「な、なに?」

こわいなあ……

悪い予感がして病室を出ようとした。

しかし子どもたちにつかまり、ベットへ連れていかれた。

「ど、どうしたの?」

私が不安気に聞くとつぼみが不気味に笑いながら

「あの人って、この前の人だよね?」

「う、うん」

「あれ?前に聞いたときには知らない人って言ってたよね?」

「そ、その時は……」

「いいのよ、白雪ちゃん」

そう言って話に入ってきたのは明子さんだ。み

「彼氏なんでしょ?」

「ちがうの」

「なにがちがうの?」

そうテンポよく入ってきたのはつぼみだった。

「あの人とは今日初めてちゃんと話をしたの」

みんなは怪しいといった顔で私を見ている。

「それより今日、みんな私のところに絵本読んでとか遊ぼうとか言いに来なかったね。どうしたの?」

私がそうたずねると子どもたちがいっせいにつぼみを見た。

「つぼみお姉ちゃんに2人のじゃましちゃだめって」

「つぼみ?」

そう言ってつぼみの方を見ると

「ごめんね……もしかしたらあの人が王子様になってくれる人なのかなって……」

つぼみは本当に申し訳ないというように私の顔を見た。

きっと、からかうとかそういうこちじゃなくて純粋に私のことを思ってやってくれたことなのだろう。

「誰が王子様だって!?」

そう言って病室へ入ってきたのは良子だ。

あ……一番聞かれたくなかった……

「親友の私になんの報告もなしとはね~」

「良子これは……」

「言い訳はさせん!」

「ちがうんだってばー!」

それから夜までずっとこの話でもちきりだった。

つかれた……

私はため息をつき窓の外を見た。

いつも暗くてこわいはずの夜が月が輝く美しい夜に見えた。

『明日も来ていいですか?』という彼の言葉を思い出す。


また明日もあのベンチで待っていよう。