っ……

私は恥ずかしさのあまりうつむいてしまった。

顔が熱い。

なんて言葉を返したらいいんだろう。

どんな顔をしたらいいんだろう。

頭の中でいろんなものがぐるぐるしている。

「大丈夫ですか?」

彼の優しい声がした。

今の顔はきっと真っ赤でとても見せられるものじゃない。

私は「大丈夫です」とうつむいたまま言った。

「もう夕方ですね。空がオレンジ色だ」

顔を上げると彼が立ち上がって空を見上げている。

空を見上げる彼の横顔はとてもきれいだった。

「きれいですね」

私もそう言って立ち上がった。

ふと彼を見ると目が合ってしまった。

あわてて顔をそむけると

「そろそろ薬の時間なので部屋へ戻りますね」

そう言って病室へ戻ろうとした。

すると「藤白さん」と名前を呼ばれ、彼の方を見た。

「明日も、ここへ来てもいいですか?」

彼は真っすぐな視線で私にたずねた。

「はい」

私はそう返事をして彼に背を向け、病室へ向かった。