すると

「まって!」

と背後から彼に呼び止められた。

彼の方を見ると彼は真っすぐに私を見ている。

「あ、なまえ……名前教えてもらえますか?」

男の人からこんなに真っすぐに名前を聞かれたことがない。

だからどうやってこたえたらいいかわからないし、何だか恥ずかしい。

でもこたえなきゃ。

私は彼を真っすぐに見て

「藤白結姫です」

とこたえた。

一生懸命に言ったのだが結局小さな声になってしまった。

何だか微妙な空気になってしまった。

ここから逃げ出してしまいたくなった。

でもまだ彼の名前を聞いていない。

私は勇気を出して

「あなたの名前は……?」

とたずねた。

すると彼は驚いたような顔をした。

なんか変なこと言っちゃったのかな……?

私が心配していると

「あ、結城柊馬です」

とあわててこたえた。

どうしたのだろう……?

「白雪姫はやく~」

と中庭の方から子どもたちの声がした。

あ、さっきまで遊んでたんだ。

「今行くね」

そう言って私は彼にお辞儀をして中庭へ戻った。