子どもたちは中庭の中を元気に走り回っている。

私なんて5分で疲れてしまったというのに……

と私がベンチで休んでいるとどこからか小さな子の泣き声がする。

廊下から……?

声のする方を見ると小さな子が床に座り込んで泣いている。

私はその子に駆け寄り「大丈夫?」と声をかけた時だった。

「大丈夫?」

と誰かと声が重なった。

この声……

「ありがとう……お兄ちゃんお姉ちゃん……」

「痛かったな」

「ケガは?」

「大丈夫……」

「よかった、立てる?」

「うん」

その子はそう言って立ち上がると中庭へ走って行った。

「走ったら危ないよ」

「走ったら危ないぞ」

再び声が重なった。

そこには彼が立っていた。

私たちは目が合うと

「あの時の……」

「あの時の……」

とまた声が重なった。

思わず2人とも笑ってしまった。

なんだか視線を感じる。

周りの看護師さんや患者さんたちが私たちのことを見ながら笑っている。


ハッ

と私は我に返った。

ここから逃げなきゃ。

「そ、それじゃあ……」

そう言って彼に背を向け病室へ戻ることにした。

失礼だとは思ったけれどあんなに見られてたら……