「すみません!」

その人はしゃがんで絵本を拾い始めた。

どうやらぶつかった拍子に持っていた本を落としてしまったようだ。

俺も手伝おうと絵本に手を伸ばした。

絵本の上で手が重なった。

その人はいきなり立ち上がった。

驚かせてしまったのだろうか。

ゆっくりと立ち上がり絵本を手渡した。

そこには同い年くらいの女の人がいた。

「すみません、大丈夫でしたか?」

「いえ、私が周りを見ていなかったから……本当にごめんなさい」

彼女は真っすぐに俺を見て言った。

「ケガはないですか?」

「あ、大丈夫です」

そう言うと微笑んだ。

胸が高鳴る。

俺は彼女から目を離すことができなくなっていた。

まるで時間が止まっているかのように……

彼女はいきなり目をそらすとお辞儀をして歩いて行ってしまった。

「名前は……」

そうたずねようとしたが彼女の姿は見えなくなっていた。

彼女はいったい……

「柊馬帰るよ~」

「早く~」

「帰る」

とみんなが玄関のところで待っていた。

「おう」

俺はみんなのいる方へ向かった」