~結姫side~
今日もまた、いつもと同じように1日が終わってしまう。
そんなことを思いながら読み聞かせを終えた本を5冊ほど抱えながら病室へ向かっていた。
もうすぐ薬の時間なのだ。
遅れると看護師さんの明子さんに怒られてしまう。
そう私が早歩きで歩いていると
ドンッ
歩くのに夢中になりすぎて誰かにぶつかってしまった。
ぶつかった拍子に持っていた絵本も落としてしまった。
「ごめんなさい!」
そう言って急いで本を拾った。
すると誰かと1つの絵本の上で手が重なった。
私は驚き、思わず立ち上がった。
その人はゆっくりと立ち上がると「はい」と私に絵本を手渡した。
そこには同い年くらいの男の人が立っていた。
「すみません、大丈夫でしたか?」
その人は心配そうに私の目を真っすぐ見た。
「いえ、私が周りを見てなかったから……本当にごめんなさい」
「ケガはないですか?」
「あ、大丈夫です」
「よかった」
そう言うと彼は私に優しく微笑んだ。
胸が高鳴る。
私は彼から目を離すことができなくなっていた。
まるで時間が止まっているかのように……
ふと時計が視界に入った。
薬の時間をとっくに過ぎていた。
大変!
私は我に返ると彼にお辞儀をして急いで病室へ向かった。