しばらく呆然と立っていた時、廊下から足音が響いた。



『…ッやば。』



咄嗟に隠れた。…いや、隠れられるところは限られてるんだけどね?



タンスの中に入った。



狭くはないけど、決して広くもない。



周りを見ると、端っこに1枚、写真が貼ってあった。



『………これ…。』



父さんと母さんと彰さんと蘭さんと大和くんと桜ちゃんが嬉しそうに笑っていた。…そこに隼と出雲も笑って写っていた。



『…母さんが抱いてる赤ちゃん…は…私…?』



ガタッ



…あ、やべ。



隼「…誰かいるのか。」



『……。』



…隼か。びっくりした…。けどなんか出る雰囲気じゃない気がするのでしばらくそのままでいよう。



隼「……ここか…?…オイ。」



ガチャッ



『……眩しい。』



隼「お前か。何してるんだここで。」



『…本能的に入ったというかなんというか。』



隼「…何かあったか。」



『…や、何もない…わけではないんだけどね。…俺、隼と出雲に会ったことあったんだなって。』



隼「……ああ。まあ俺たちは小さかったからな。あまり覚えていない。」



『俺は欠片すらないわ。…俺たちの父さんと母さんが知り合いみたいだったな。大和くんと桜ちゃんに聞いて初めて…あ、隼ってあの彰さんと蘭さんの息子だとは思わなかった。』



隼「…知ってるのか、親父を。」



『うん。だって俺の師匠だもん。』



隼「……そうか。」



『彰さんもそうだけど、蘭さんめっちゃ強いんだよね。俺勝てたことないわ。』



隼「俺もだ。帰省するときは大体絡まれるんだが、いつも負ける。」



『相当悔しいんだね隼?』



隼「…女に…母さんに勝てたこと無いなんて恥だろ。未だに勝てないとか…アイツは妖怪か何かだ。」



『蘭さんを悪く言うんじゃないよ。まあでも…妖怪みたいなのは認める。』



同じ女とは思えないよね、あの人。



隼「…この部屋は思い出深い写真がたくさん貼ってある。たまにここに来る時がある。今日も少し覗こうと思ったらお前がいた。」



『俺は偶然見つけた。』



隼「…そうか。」