今日は、12月24日。
世間一般的に、クリスマスイブと呼ばれる日。
「雪すげー……!魚捌けんの!?」
「なんでも捌けるわけじゃないんだけど、昔おばあちゃんから教わって……」
「いやいや、十分でしょ?あたしたち料理さっぱりだから、雪がいてくれて助かったわ」
楓ちゃん、瞳ちゃん、私の三人は、朝から楓ちゃんのお家にお邪魔させてもらっていた。
今日は、夜から6人でクリスマスパーティーをする予定。
私たちを三人の女子組と、和くん、北口先輩、瀧川先輩の男性組で分かれて、パーティーの支度をしていた。
和くんたちは、ケーキや必要なものを買いに行ってくれている。
その間、私たちは料理を作ったり、飾り付けをしたり……
ふふっ、こんな風に大勢でクリスマスを過ごすのは初めてだから、楽しみっ……。
料理を進めながら、私は1人、心を躍らせていた。
「飾り付け終わったぞー!」
装飾担当の楓ちゃんが、そう言ってキッチンまで走ってきた。
「うん、私もそろそろ準備は終わりそう。あとは焼いたりするだけ」
「うわー、うまっそー!!」
並べられた料理を見て、楓ちゃんが目を輝かせている。
「二人とも、終わったの?」
奥の部屋で準備をしていた瞳ちゃんが、戻ってきた。
笑顔で頷いた私たちを見て、瞳ちゃんは何やら口角の端を吊り上げる。
……?
「ちょっと来なさい、雪」
「……え?」
なんだろう……?
不思議に思いながらも、瞳ちゃんに手招きされ、私は奥の部屋へと着いて行った。
「ここに座って」
ドレッサーの前に座るよう指示され、大人しく腰を下ろす。
「今日は……和哉くんを驚かせてあげましょ」
「……和くんを?……どうやって?」
「ふふっ、あたしに任せなさい!」
ひ、瞳ちゃん、どうしてそんなに張り切ってるの……?
何が何だかわからないまま、私は瞳ちゃんにされるがまま、じっとしていた。
「さ、これ着てみて」
「え、ええっ……む、無理だよっ……!」
「いいから着るのよ!!!」
「は、はいっ……!」
あまりの迫力に、私に与えられた拒否権が無いことを受け入れた。
「……雪」
「……は、はい……」
「……サイッコーよ!!!!」
瞳ちゃんは、私の姿を上から下までまじまじと見つめた後、噛みしめるようにそう言った。
「うんうん!!和哉くんもぜってーびっくりするって!!!」
隣にいた楓ちゃんも、首を何度も縦に振っていた。
……は、恥ずかしい……っ……。
鏡に映った自分を見て、そう思う。
今の私の格好は、ポニーテールの髪に、ナチュラルメイク、そしてサンタさんの格好をしたワンピースを着ている。
しかも、スカートの丈が極端に短いもの。
「和哉くん、可愛すぎて言葉も出ないかもなぁー!」
「そうね。多分間抜けな顔するわよ」
「和哉くんが間抜けな顔……ギャハハッ!!」
お腹を抱えてゲラゲラ笑っている楓ちゃんに、苦笑いを向ける。
メイクをしてくれたのは嬉しいけど……いつもと違いすぎて、和くんに引かれないかな……?
基本的に、髪は下ろしているし、普段スカートも膝上くらいの短さが限度。
こんな、露出の激しい服……和くんに見られるの、恥ずかしいっ……。
「ね、ねぇ、脱いじゃダメ……?」
「ダメよ!!せっかく準備したんだから!!」
「そうだぞ雪!和哉くんの反応見てみたいし、可愛いから自信持てって!」
二人に言いくるめられ、結局この格好のまま、和哉くんたちの帰りを待つことになった。
はぁ……変だって思われなければいいんだけど……。
「おい涼介、これ持ってって」
車から荷物を出して、涼介に渡す。
「了解!」
「真人はこっち」
「りょ〜!」
クリスマス用に買った荷物を持って、笹川の家へ向かわせてもらう。
今日は、六人でクリスマスパーティーをすることになった。
大学一年になり、雪と過ごす二度目のクリスマス。
俺は二人で過ごしたかったけど、笹川たちに誘われた雪が、参加したそうにしていたから……
まあイブくらいは、六人で過ごしてもいいかと思い、承諾した。
それに、雪がしたいと思うことを、阻みたくはない。
雪が楽しいなら、それだけでいい。
インターホンを押すと、小泉の声が。