この人、平田先生は美術部の副顧問。



まあ、とはいっても美術の経験は全くなく学生時代はサッカーにのめり込んでいたらしく、体育の先生なのだ。



そのせいか、体格はがっちりしていて肌はこんがりと焼けている。



だけど顔は整っていて愛嬌がある。



男女ともに好かれており、教師の中ではダントツに人気がある。



サッカー部がすでに顧問も副顧問もいて、新任教師だから副顧問しか任せられないという理由から美術部の副顧問にされたらしい。



美術部員の私の前で全く遠慮なしに、サッカー部の顧問をしたいといつも嘆いている。



「島内、描きたいものが見つかんねえなら新しいものを探しに行こうぜ」



「え?」



「ついてこい」



得意げにどこのものかわからない鍵を見せてきて私の腕を引っ張った。



美術に関してちんぷんかんぷんのこの人が一体何を見せてくれるというのだ。