「お前さ、俺のこと名前しか知らないだろ?
もしかしたら俺はどうしようもない不良かもしれないし、屋上になんているんだし自殺しようとしていたところかもしれない。
俺がどんなやつかも知らないくせに、いきなり描きたいなんて笑わせるな」



鋭い目つきに強い口調でそう言い放った納戸くんに少し動揺するけど、ここで諦めていられない。



「どんな人かなんて見てたらわかるよ。
この世界が大嫌いなんでしょ?
恨んでるんでしょ?
だけど、この世界に馴染めない自分が何より嫌い」



「な…」



掠れた声をあげて体を震わせる。



「そんなあなたを描きたいの
お願い、私にほんの少し力を貸してくれないかな…」



しばらく無言だった。



静かすぎて、いつもは聞こえない音たちがやけにはっきり聞こえる。



「描くとしたら…俺は…何色だ?」



か細い声でそう問いかけられる。



「今のところ…白と黒だけかな。
だって、あなた色なんて持ってない」



ふっと息を吐き出したと思えば、終いには腹を抱えて笑いだした。