掃除道具を片付けると、部室にいた後輩の子が近づいて来た。



「先輩、なんであいつらの言うことなんか聞くんですか?無視すればいいじゃないですか!」



美術部員は穏やかな平和主義の子が多いんだけど、この子は目立って血気盛んで、平田先生を追っかけて入部して来たあの子達(今後平田ガールズと略します)に立ち向かっている。



今も、割と大きな声で平田ガールズに聞こえるように言ってるし。



それに気づいている平田ガールズはこちらを睨んでいる。



私はというか私こそが平和主義の美術部員代表だと思っている。



だからわざわざ面倒ごとを起こしたくないのに。



「私がしたくてしてるから大丈夫だよ」



「そんな嘘いらないですよ!あいつら先輩が可愛くてモテるのが気に入らないんですよ!
あ、そうだ、先輩のいつめんさんたちに言えばいいんじゃないですか?
瑠衣さんとか出てきたらあいつらびびって何もできませんよ!」



ほんとにイライラする。



「私のこと考えてくれるのは嬉しいけど、友達ってそんな風に利用したりするものじゃないと思う」



そう言うと、後輩の子は決まり悪そうに俯いた。



「ありがとね」



その子も私のことを心配して言ってくれたんだろうし、一応お礼を言って自分の道具が置いてある場所に移動した。



「いい子ぶってんじゃねえよ、マジうぜえ」



そんな呟きは、聞こえていないフリでかわした。