「いつまで待たせ……」
と言いかけた奏汰は、

「可愛いじゃないか」
とマジマジとつぐみの全身を見て言う。

 つぐみは真っ白な、お姫様のようなネグリジェを着ていた。

「じ、実はこれは、母が持たせてくれたものなのですが。
 しょ、初夜に着なさいと言って……」

 でも、今まで着る気になれなかったので、そのまま置いていたのだ。

 祈るように手を合わせ、かっ、覚悟を決めて、着てみましたっ、という風情で言うと、奏汰は笑い出す。

「……死装束か」
と言って。

 奏汰は、つぐみをひょいと抱き上げると、そのまま、つぐみのベッドに放った。

「まあ、初めてのときは、自分の部屋の方が緊張しなくていいと言うから、こっちでいいか」
と言いながら、つぐみの上に乗り、両手を押さえ込んでくる。

 近づくその顔に、
「や、やっぱり無理ですーっ」
と叫んだつぐみは右を見て、左を見て、上を見て、下を見て、凶器を探すがなにもない。

「いい加減、観念しろ」
と言った奏汰だったが、あまりにも硬くなっているつぐみに笑い出す。