「そんなに俺が嫌か」
と腕を組み、渋い顔で奏汰が訊いてくる。

「そ、そういうわけでもないんですけど……」

　うん。
　そういうわけでもないな、今は、と改めて思ってしまう。

「でも、やっぱり、恥ずかしいと言いますか」
と赤くなって、ぐずぐず言っていたつぐみだが、……そうだ！　と思い出す。

「しょ、少々お待ちくださいっ」
と走って自分の部屋に戻っていった。

　準備をすませ、奏汰のところに戻ろうとして、ふと気づく。

　自分から戻っていったら、さあ、襲ってくださいっと言っているようなものだな、と。

　困った……。
　戻りにくくなったぞ、と思う背後で、

「おい」
と声がした。

　ひっ、とつぐみは息を呑む。

　急いでいたので、扉は開けっ放しのままだったようだ。