奏汰は、西和田が揚げたのではない唐揚げを食べながら、つぐみの作ってくれたカクテルを呑む。

 やさしい甘さと温かさだった。

 それを呑みながら、つぐみが来てからの日々を思い返していた。

 体裁を繕つくろうために、なんとなく始まった同居生活だったが。

 今日はつぐみに、なんのカクテルを作ってやろうかな、と思いながら、帰る日々。

 今までと同じはずの帰り道が全然違って見えた。

 住宅街に灯る家々の明かりを見るとき、一瞬感じていた寂しさとか。

 俺は此処でこうしていていいのかとか。

 俺の今までの生き方は間違ってはいないのかとか。

 ふと生じていた迷いが今はない。

 でもそれは、ただ、帰ったときに、家に灯りがついているから寂しくならないとか、そういうのではない。

 そこにつぐみが居るから。

 自分が先に真っ暗な家に帰ったとしても、そのうち、つぐみが帰ってくると思うだけで、気持ちが違う。

 彼女の帰りを待ちながら、酒を作ったり、料理を仕込んだりするのも、きっと楽しいに違いない――。