『高校生の受験は入学式から始まっている』
ーー私が通う学校の教師の言葉である。

最初は、いや、さっきまではあまり真に受けていなかった。よくある脅しだろうと。そもそもこの学校は私立な上に進学校という訳でもなし、私が余裕で入れたのだから周りのレベルも相応のものであると、そう思っていたのだ。…しかし、さきほど受け取った一学期の期末テストの順位は240人中170位。これはまずかった。
勉強を怠っていたとはいえ、成績に関してはうるさい母に知れれば携帯電話の没収、運が悪ければ塾に無理やり入れられるかもしれない。そうなればバイトはもちろん部活動さえできるかも怪しい。ーーーー家に帰りたくない!

沈んだ気持ちでとぼとぼ帰路を歩いていると、路地裏に何かの看板を見留めた。薄汚れた白のペンキにシンプルな黒字で『すずや書店』と書かれている。
(こんな店あったんだ…)
どうせ家に帰ろうという気分にはなれなかったため、少し寄ってみることにした。