「ふーん......、おめでとう?
婚約早々お前も大変だな。次期社長の座を解任されることになって」


え?
秋人の兄が楽しそうに告げたことに衝撃を受け、秋人の顔を見たけれど、少しだけ眉間にしわを寄せただけでほぼいつも通り。

立ったまま腕を組んで、ソファに座る自分の兄を冷たい表情で見下ろしている。

 
「今は少し離れているだけだ。
解任されたわけじゃない」

「へぇ、そうなんだ?
父さんは相当お前に失望したようだったけど。
お前じゃなくて、慎吾に会社を任せることも考えてるって言ってたぞ」

「慎吾に......?」

「あーあ、今回はやらかしたな。
まあ一から出直しだと思って、平社員からがんばれよ」


全然話についていけないけど、秋人の表情はどんどん曇ってきているのは分かる。

なに?何なの? 
慎吾って誰よ?
このお兄さんとやらは、いきなりきてなんなわけ?


「君も大変だね。
どう?君さえ良かったら、秋人はやめて俺にしとく? 
君のお父さんは、秋人じゃなくても俺か慎吾でも良かったはずだよ」 


楽しそうな兄に比べて、秋人の方は終始厳しい表情を浮かべている。

険悪な雰囲気の二人の顔を代わる代わる見ていると、秋人の兄はいきなりソファから立ち上がり、私の頬へと手を伸ばす。