だけど…、




「綾瀬桃。」




倉庫の入り口まで来た時、後ろから名前を呼ばれた。


奏多くんでもない、龍也でもない。


喜連の誰でもない声。


振り返ると、私を呼んでいたのは青色のメッシュ。


私を見てニヤっと笑う。




「久しぶりだな。」




何…、私に何か用?


もう、話しかけないでほしい。




「瀬崎と別れたんだって?」


「…は?」


「街中噂だよ。原因はあ…「やめろ。」」




話し出すこいつの言葉を、遮ったのは奏多くん。


だけど、話の意味がわからない。


…瀬崎と別れた?




「原因は、あの時の俺らなんだってな。」


「…何が?」




意味わかんない。


何の話?


だけど、こいつの顔には見覚えがある。


たしか…、夏祭りの日に…、


夏祭りの日に…?




「…奏多くん。」




頭はグルグル回った。


今までにないくらいにフル回転させて、今なら全て思い出せると思った。


だけど。




「奏多くん!」