「あのねっ…、」
空きビルを出てバイクの前まで来た時、奏多くんに呼びかけた。
ずっと、後悔していたことがある。
思っていないことを言って、きっと彼を傷つけた。
「本当は、嫌いじゃないの…、奏多くんのこと嫌いになったことなんて一度もないの。」
泣きそうになるのをグッと堪えて、彼の目を見て後悔を1つ消した。
きっと、あの時の一言で彼に嫌われた。
だけど今、ちゃんと言えてる。
これを伝えてから、彼に嫌われるならもう後悔はない。
「ごめんね。傷つけて、ごめん…、」
頭を下げた私に、彼は優しい声でこう言った。
「俺も。桃のこと嫌いになったことないよ。」
私の頭にポンと手を置いた奏多君。
よかった。
ちゃんと言えてよかった。
「全部終わったら桃に言いたいことあるから、聞いてくれる?」
「…うん!」