電話を切ってから数分して、聞こえてきたバイクの音。


それは私が今いる空きビルの前で止まった。



…ガタンっ、


バイクの音が止んでから、次に聞こえたのは入り口を開ける音。


…来てくれた。


そう思いたいけど、もしこれがさっき追いかけて来ていた族の人だったら?


そう思うと、埋めていた顔を上げることはできなかった。


こっちへ進んでくる足音は安心と期待、不安と恐怖で私を襲う。




「…桃、」




だけどその足音の正体は、きっと私の大好きな人。


見なくてもわかる。

声だけでわかるの。




「…奏多くん、」


「おいで。」




見上げて見た彼は、最後に見た時とは何にも変わっていない。


綺麗な金髪に、優しい声。


大きな手に、どこか余裕のある雰囲気。




「無事でよかった。」