「奏多さんに電話して下さい。」
「え?」
「奏多さんは絶対来てくれます。」
奥の奥まで入っていった部屋。
もうボロボロになっている机の下に私を入れて、シュウトは私の前にしゃがんだ。
「わかりましたか?」
「で、でも、シュウトは…?」
「俺は大丈夫ですよ。これでも喜連の一員ですから。」
私を安心させるためか、ニカっと笑ったシュウトは私の肩をポンと叩いて立ち上がった。
そのまま来た道を戻って行き、それと同時にバイクの音は空きビルを通過して行った。
シュウト…。
机の下で固まっていた私は、バイクの音が通過すると同時に我に返り、ポケットから携帯を取り出した。
久しぶりに見る‘‘奏多くん”の文字。
大嫌いなんて言ったのに、助けてと言うのは相当都合の良いことだ。
助けてくれなくても、嫌われても仕方ない。
でも今は、シュウトも危険なんだ。