「桃さん、走りますよ。」


「え?!」




いきなり私の手を引っ張るシュウトは、一歩先をかなりのスピードで走る。


それについて行くのがやっとな私は、必死に足を走らせた。


次第に近づいてくるバイクの音は、どんどん大きくなっていて、すぐ近くにいることがわかった。


走って走って、辿り着いたのは使われていない空きビルだった。


ドアを壊して、中へ入るシュウトに私もついて行く。




「ねえ、どうなってんの?」


「奏多さんに電話して下さい。」


「え?」




奥へ奥へと続く扉を1つずつ壊して行くシュウトは、前を見ながら私にそう言った。




「意味わかんないんだけど!この状況説明してよ!」




扉を蹴って壊すシュウトの背中に問いかけた質問で、彼の動きは止まった。


どうなってんの?

なんなの?この状況?




「族です。」


「え?」


「追われてます。」




私の体のどこかで溜まっていた、何かがフッと蘇った。