でも、何処にも彼の姿は見当たらない。
あの寿永隊長に限って逃げ遅れるなんて有り得ない──。
そう自分に言い聞かせた。
そうだ、彼に限って逃げ遅れるなんて──。
ふと、瓦礫の傍で何かが光った。
「寿永隊長!」
駆け寄ってみると、それは寿永隊長が身に付けていた腕時計だった。
腕時計は爆発の影響なのか壊れて止まっていて、文字盤には赤い液体が付いていた。
腕時計だけがそこにあって、彼の姿は何処にもない。
彼の姿は見当たらないのに、血の付いた腕時計だけが此処にある。
「あ……あぁ……」
私は全身の力が抜けたように、その場に座り込む。
壊れた時計に付着した血液、そして、瓦礫の山。
彼の名前を呼んでも返事がない、姿も見当たらない。
もう確信してしまった。
彼は──。