「すみません、ありがとうございます……」




「ああ。足元は抜けやすい、気を付けろ」




寿永隊長は私を立たせると再び歩き出す。




そして、前触れもなく足を止め、ドアノブに手をかける。





「此処から時計の音がする……」




時計の音?




床が抜けてしまうほど老朽化している洋館なら動いている時計がある訳がない。




何か嫌な予感がする……。




「待ってください!」




私はドアを開けようとする寿永隊長を制止する。




制止したことで、彼は険しい顔を私に向けてきた。





「何だ?」




険しい顔を向けられて、私は何も言えなくなる。




私が首を横に振ると、寿永隊長はドアを押し開けた。