それからしばらく歩いた先にあったのは古ぼけた洋館だった。
だいぶ前に廃屋になったらしく、庭は雑草だらけで建物の中も老朽化が進んでいた。
「此処に汀様が……?」
前を歩く寿永隊長について行きながら、敵がいないか見て回る。
「いや、汀は此処にはいない」
「へ!?」
寿永隊長の口から出た衝撃的な言葉に、声が大きくなる。
でも、「うるさい」と彼の手の平で口を塞がれた。
え、だって、汀様は此処にいないんだよ!?
いないのに、何で此処に……。
「詳しくは知らんが、汀のスマホのGPSを追った結果だ。……が、人影は感じられない」
寿永隊長は洋館の軋む階段を登りながら二階へ上がる。
私も後を追いかけると、予想外なことに二階に上がった途端床が抜けた。
でも、寿永隊長が私の手を掴んで自分の方に引き寄せてくれる。
お、落ちるかと思った……。