「……誰だ?何故、汀のスマホを持っている?」
『我々は安倍明晴に賛同し、切碕復活を願う者だ。弟は預かった。返して欲しくば、黒いノートのコピーを渡せ』
「……渡さなければ?」
『弟が父親のようになるだけだ』
ブツリと音を立てて切れた通話に、寿永隊長は深くため息を吐いた。
会話は全て私にも聞こえていた。
まさか、汀様が誘拐されるなんて……。
それに、安倍明晴に加担する人間が他にもいるなんて予想外だ。
「安倍明晴の他に切碕復活を望む者がいるなんて……」
「いるだろうな。奴……切碕は犯罪思考の強い者達からは英雄として見られてる。死ぬまでに未遂も含めて100件以上の殺人を犯しているからな」
「100件!?」
「普通なら有り得ない数字だが、切碕は犯した。その切碕を日本の警察は捕まえられないただの無能だ」
件数を聞けば、確かに無能だったとしか言えないかもしれない。
でも、切碕には陰陽師の安倍晴明のDNAから作られた安倍明晴がいた。
安倍晴明がその犯罪に加担していたなら、何らかの術で捕まえられないのも有り得なくもない。
「まあ、それは良いとしてまずは汀の救出か」
「そ、そうですよ!汀様を早く救出しないと!あ、でも、居場所が……」
犯人は汀様の居場所を言っていない。
だから、検討もつかない。