「萌。ちゃんと帰れる?」

「あったりまえ~」


ロレツの回っていない声でそう言って、萌はニッコリと笑った。

両方にできた笑窪が可愛らしい。


お酒が弱いくせに、萌はいつもこんな風になるまで付き合ってくれる。

明日は互いに休みだけど、終電の時間が近づいてきたから、そろそろ解散しようという事になった。

まだ飲む! と言い張る萌だけど、これ以上飲ませるなんて無理だと思って、強制的に解散する事にした。


「何かあったら電話して? いい?」

「りょ~かいっ!!」


見事な敬礼を見せた萌を見送ってから、私も電車に飛び乗る。

満員電車だったら嫌だなと思ったけど、運よく座る事ができた。


ネオンに照らされた見慣れた景色が過ぎていく。

そんな中、ぼんやりと彼の事を思いだした。


――今、彼はどこで何をしているんだろう。


どこかセンチメンタルな気分になりながら、電車の中で仲良く隣同士に並ぶカップルの姿をぼんやりと眺めた。

会いたい。と思いながら。