「あっけないなぁ」


思い出の写真を持ち上げて、そう呟く。

あんなに楽しかった日々も、なんだか幻の様に思える。

写真の中で楽しそうに笑うあの時の自分の気持ちは、もう思い出せない。


だけど、別れようと言われて安心した自分がいたのは確か。

晶が言わなければ、私から切り出さなきゃいけなかったから。


好きな人ができた――。


晶にそう言われて、心のどこかでホッとした。

一ノ瀬さんと内緒で会っていた事に、少なからず罪悪感を感じていたのは確かだから。


「バイバイ」


5年も付き合った彼と別れたのに、心がスッキリしている。

ずっと背負ってきた荷物が、降りたような、そんな気持ち。


その理由を私は知っている。

こんな時でも、私の心を占める人。


「会いたいなぁ」


自分でも、最低だと思う。

それでも、私の心はもうあの人しか入る隙間がないんだ。