◇◇


「え?」


唐突に言われた言葉に、思考回路が停止した。

晶と別れようと心に決めてから二週間が過ぎた頃だった。

仕事が終わって、着いたばかりのマンションの自室。

リビングに入ってドサリとソファに腰かけた瞬間、携帯が鳴って電話を取った。


『別れてほしい』


久しぶりに聞いた彼氏の声で言われた言葉は、予想外のものだった。

何の前触れも無く突然言われたもんだから、思考回路が停止して何も言えなくなる。

それでも、受話器の向こうの彼氏は、まるで用意されていた言葉の様に声を発した。


『もう、好きじゃなくなった』


聞こえる声が、心に落ちていく。

それでも、何故か悲しくはなかった。

心のどこかで、良かった。とさえ思えた。

その事に、最低な女だなと思って思わず自嘲気に笑った。