「一ノ瀬さんが凍えてないかなって心配したんです!」
「へ~、そ~」
「その言い方腹立ちますね~」
ニヤニヤと笑う彼の隣に腰かけて、その腕にパンチを繰り出す。
精悍なその横顔が、淡いライトに照らされて浮かび上がる。
昼間上司といた時に見せた姿ではない、気を張っていない姿。
屈託なく笑うその笑顔に胸が締め付けられる。
惹かれていく。
自分でも驚く程のスピードで。
ほんの数十分だけのこの時間が、永遠に続けばいいと思う。
「風邪ひかないで下さいよ」
「お互いにな」
「ふふっ、私は寒さには強いから大丈夫ですよ」
「無理してんのバレバレだぞ。ってか、今日の打合せはどうだった?」
「あ、うまく進んでいますよ。早く形にならないか楽しみです」
「よかった。あ、今日さ――」
相槌を互いにうちあって、笑いながら今日あった事を話す。
他愛もない会話。
だけど、それが楽しくて楽しくて仕方ない。
久しぶりに感じる、この胸が躍る感覚。
すっかり忘れていた―――。