「花粉症もちで、春になったら毎日鼻をすすってる」

「あ、私も春先はずっとマスクしてます」


なんだろう。

楽しくて仕方ない。


少しでも彼との共通点を見つけたくて。

新しい彼の表情が知りたくて。

取りこぼさない様に、真っ直ぐただただ目の前の彼を見つめた。


勝手に零れる笑みが。

勝手に温かくなる心が。

止まる事なく、私を彼へと向ける。


それでも、微かな会話の途切れ。

カチカチと時計の秒針の音が聞こえる。

そして――。


「今日、嬉しい事があった」


突然そう切り出した彼。

ビー玉の様な瞳を微かに細めて、私を見つめる。