「――・・・・・・じゃぁ。一つ我儘を言ってもいいですか?」


少しだけ遠慮がちに呟いた自分の声に、一ノ瀬さんは少しだけ微笑んで首を傾げた。

精悍なその顔つきに、思わず微かに頬が赤くなる。

だけど、心の中は知りたい気持ちで溢れていた。


どんな人なのか。

どんな過去があるのか。

何をして。

何を考えて。

生きているのか。

知りたくて、堪らない――。



「一ノ瀬さんの事、教えてください」


じっと私を見つめていた彼に、そう言う。

意を決して出た言葉だったからか、どこか頼りない声だった。

今にも震えてしまいそうな手を膝の上でギュッと握る。


「何でもいいんで」


はにかむ様に笑ってそう言った私を見て、一ノ瀬さんは何度か瞬きを繰り返した。