「わ、私の家すぐそこなんで、一度体拭いてくださいっ」


ブンブンと顔を横に振って、慌てて辺りを確認する。

すると、案の定見慣れたマンションがすぐ目の前にあった。


「いや、でも――」

「いいから、来てくださいっ」


一瞬戸惑った一ノ瀬さんの腕を掴んで、強引に駆ける。

私に傘を貸して荷物まで一緒に運んでもらったばっかりに、濡れずに帰れたはずの一ノ瀬さんがびしょ濡れになってしまった。

そんなの申し訳なさすぎるっ!!


既にぐっしょりと濡れてしまった靴を気にかける事なく、水たまりを踏んづけて駆ける。

静まり返った路地に、2人の駆ける足音だけが響いた。

そして、そのままバタバタとマンションの中に駆け込んだ。


「こっちです」

「いや、でも・・・・・・」

「このままじゃ、絶対風邪ひきます」


どこか躊躇する一ノ瀬さんを玄関に残して、部屋の中へバタバタと駆け込む。