「あっぶねー・・・・・・」
耳元で小さく囁かれる声。
熱い吐息がかかって、ゾクゾクと背中が疼く。
あまりにも近くに一ノ瀬さんの顔があって、体が一気に石の様に固くなった。
それでも、微かに視線を上に向けると、ポタポタと一ノ瀬さんの髪から滴が落ちてきていた。
「だ、大丈夫ですかっ!?」
その姿を見て、我に返って慌てて声を出す。
庇ってもらった事は一目瞭然だった。
「突然ゴメン。思わず」
「そんなっ」
「大丈夫だった?」
それでも、なんでもないといった様子で私の姿を上から下までなぞった彼。
そして、びしょ濡れの私の足元を見て慌ててポケットからハンカチを取り出した。
「やっぱり、濡れてる」
「いやいやいやっ、一ノ瀬さんの方がびしょ濡れでしょっ」
髪なんて、びしょ濡れだし。
服も絞ったら水が出てきそうだ。