「不思議だよな~」


嬉しさで言葉を失った私に、どこか独り言の様にそう呟いた彼。

そして、再びゆっくりと足を前に出した。

進んでいくその背中を見つめて、胸が甘い疼きを感じる。

無意識に上がっていく頬を、抑える事なんてできない。


「・・・・・・私も」

「え?」

「私もっ」


零れた言葉は、静かな路地にコダマする。

私の言葉を聞いて、視線だけ振り返った彼が嬉しそうに笑うもんだから、思わず駆け寄ってしまう。


「私もそう思いましたっ」

「聞こえてるって」

「私もそう思ったのっ」

「だから聞こえてるって」


何度もそう言う私を見て、ケラケラと笑う彼。

その精悍な顔立ちを、惜しげもなく崩して。