「柚葉」


優しく名前を呼ばれて、そっと髪を撫でられる。

懐かしいその仕草に、胸が震えた。


色を無くしていた世界が、ゆっくりと色を取り戻す。

あの公園で止まってしまった時間が、ゆっくりと動き出す。


唇を噛み締めて涙を溜める私に、一ノ瀬さんは優しく微笑んだ。

そして、真っ直ぐに私を見つめて口を開いた。


「好きだ」

「――っ」

「出会った時から、ずっと好きだった」


その言葉を聞いた瞬間、耐えきれずポロリと温かいものが頬を伝った。

途端に、決壊したかのようにボロボロと涙が頬を伝っていく。


「伝えなかった事、ずっと後悔してた」


その言葉に、俯いたまま何度も頷く。

私も同じだと思って。

私も後悔していたと思って。


もう、頭の中がグルグル回っていた。

だけど、それでも、その言葉だけが胸にすっと届いた。


だって、ずっと聞きたかった言葉だったから。

あなたと出会ってから、ずっとずっと欲しかった言葉だから。

それでも、怖くて聞けなかった言葉だったから。