真っ直ぐに私を射ぬく瞳から目が離せない。

彼が発する言葉一つ一つを零さない様に、耳を傾ける。

ただじっと見つめ合う中で、ゆっくりと彼が口を開いた。


「・・・・・・2年は長い。生活も変われば、価値観も変わる」

「――」

「思い出も、色褪せる」


その言葉に、何も言えずに固まる。

その言葉の意味が分からなくて。

だけど何も言わずに、ただただ彼の言葉に耳を傾けた。


「だけど、俺はあの日のまま変わらない。柚葉と別れたあの場所から、何も」

「あの日のまま……?」

「あぁ。最後に会ったあの日のまま」

「――」

「ずっと、駆け出したい気持ちを抑えて生きてきた。もしかして、もう手遅れなんじゃないかって何度も思った。その度に狂ってしまいそうになった。それでも、自分の決めた事だから途中で投げだしたくなかった」

「――」

「諦めるべきなのかとも思った。でも、諦めきれなかった」


そう言って瞳を歪めた彼は、冷たい指先で一度私の頬を撫でた。

懐かしいその仕草に、胸がいっぱいになる。

まるで、あの日に戻った様な気持ちになる。