呟いた自分の声が、自分のものなのか分からない。

息の仕方を忘れてしまった。

魔法にかかった様に体が動かない。


ただ一つ、胸だけが痛い程締め付けられていた。

だって、目の前にいるのは――。


「柚葉」


思考回路がメチャクチャの私を置いて、ふっと優しく微笑んだ彼。

思い出の中と、全く同じ笑顔で私の名前を呼んだ。


その瞬間、唇が震えた。

指先がカタカタと音がしそうな程、震えた。

今にも足元から崩れそうになるのを必死で絶えた。


「一ノ瀬・・・・・・さん、なの?」

「あぁ」

「ど、して」


声がうまく出せない。

あまりに突然の事で、訳が分からない。


どうして、ここにいるの?

どうして、私の傍にいるの?

どうして。

どうして――?