「一ノ瀬・・・・・・さん」


久しぶりに呼んだ彼の名前。

それだけで、胸が締め付けられた。

愛おしい思い出が、一気に蘇る。


その瞬間、やっぱり好きなのだと思い知らされた。

こんなにも会いたいのだと、こんな些細な事で思い知らされる。


本当は分かっていた。

それでも、分からないようにしていた。

忘れたフリをしているだけ。

立ち直ったフリをしているだけ。

本当は今も尚、あなたの会いたいのに。


それでも、私は一人。

この気持ちを受け取ってくれる人は、どこにもいない。

迎えに来てくれる人は、どこにも。


今にも零れ落ちそうな涙を押し込めて、ぐっと唇を噛み締める。

弱い自分を殺して、穏やかな日々に戻ろうと努力する。

小さく息を吐いて、心を落ち着かせる。


大丈夫、大丈夫。

そう心の中で何度も唱えて、閉じていた瞳を開けた。

その時――。