どこのお気に入りの店に行こうか脳内で考える。

見慣れた他の会社の人達とエレベーターで一緒になって、他愛のない会話をする。

この商業ビルには、いくつもの会社が入っていて、こうやって僅かながらにも交流があったりする。


「お疲れ様でした~」


ペコッと頭を下げながらエントランスをくぐって、外に出る。

それでも、広がった世界に思わず前に出していた足が止まった。


「どうりで肌寒いわけだ」


さっきまで晴れていたのに、この雨。

みんな予想外だったのか、鞄を頭の上にかざして屋根に向かって駆けている。


せっかくの週末なのに雨はないでしょ。

ハシゴして飲もうかと思ったのに、出鼻を挫かれた。


運悪く置き傘も折り畳み傘もない。

どうしたものかと考えあぐねていたけど、チラリと空を見上げれば、少しだけ雨は止んだように思えた。