「ふふっ。そんなんじゃないから」
「も~~。・・・・・・でも、ありがとうございます。お腹ペコペコだったんです」
「育ち盛りだもんね」
嬉しそうに笑う顔を見ると、なんだか頭をぐりぐりと撫でまわしたくなる。
無垢なその笑顔を見ていると、心が優しくなる。
素直で、真っ直ぐで、真っ白だ。
「さ、帰ってお母さんのご飯食べな」
「だから、もう子供じゃないですってば~」
文句を言いながらも、ニコニコと笑いながら私があげたお菓子をバックの中に大切に仕舞った俊君を見て微笑む。
そういえば、両親にもずっと会っていないな。
今度連休にでも帰ろうかな。
「じゃ、お先に失礼します」
「はい、お疲れ様」
片手をヒラヒラと振って、バタバタと帰っていく俊君を見送る。
誰もいなくなった事務所にポツンと1人、私だけが残っていた。