「お先に失礼しますね?」


最後まで残っていた俊君の声に合わせて顔を上げる。

気が付いたら、窓の外は真っ暗になっていて驚く。

小さく曖昧に返事をすると、どこか申し訳なさそうに頭を下げた俊君。

なんだか気を遣わせてしまったと思って、少し申し訳なくなる。


「待って、俊君」


だから、デスクの引き出しを開けて、手に持ったものを隠しながらこっちへ来るように手を招く。

すると、首を傾げた俊君がデスクまでやってきた。


「どうしました?」


小さく首を傾げた俊君に、ニヤリと笑って持っていたものを差し出す。

いつも小腹が空いたと言っては食べている、アレを。


「はい、ご褒美」

「あっ! 雪の宿!」

「これ好きだったでしょ?」

「はい!! って、なんかまた子供扱いしてません?」


ぱぁっと顔を明るくした俊君だったけど、すぐに不貞腐れた顔になって可笑しくなる。

やっぱり、可愛いと思って。