「お腹空いた~」


まるで子供の様に駄々をこねて机に突っ伏す。

だけど、昔から空腹には耐えられない性格なんだ。


はぁ。と深く息を吐いて駆け足で近くのコンビニに行こうと思い立つ。

そうと決まれば早いもので、慌てて財布をバックから引っ張りだして事務所から駆け出した。

その時。


「望月?」


不意に呼ばれた声にピタリと足を止める。

導かれる様に振り返ると、懐かしい顔がそこにはあった。

その姿に思わず目を見開く。

遠い日の思い出が、走馬灯のように蘇った。


「せ、先輩?」

「やっぱり、望月! 久しぶりっ!! 元気してた!?」


懐かしいその声に、その笑顔に、どこかホッとする。

それと同時に、2年前の記憶が一気に甦った。


私の不倫している噂が流れる中、ただ一人だけ私を信じてくれた人。

自分の耳で聞いた事しか信じないと言った、芯の強い人。


そして、裏切ってしまった人――。