「違うよ」

「――」

「自分から志願したの」


そっと自分の肩に乗る彼の手を下す。

そしてギュッと指先を一度握って、離した。


「上司からは、今のプロジェクトから外す事だけ告げられたの」

「――」

「だけど、それだけじゃダメだと思ったから」

「・・・・・・ダメ?」

「きっと、私はまた会いたいって思っちゃうから」

「――」

「忘れられないと思うから」


微笑んでそう言った私を見て、大きく瞳を揺らした彼。

そして、グッと拳を強く握りしめて、唇を噛み締めた。


「だったら、もう思い出も一ノ瀬さんもいない土地にって、そう思ったの。きっとそれが、私にとっても一ノ瀬さんにとっても、みんなにとっても最善の事なんだと思う」


この公園に来たら、また会いたくなる。

桜を見たら、会いたくなる。

夜景を見たら、会いたくなる。

緑の世界を見たら、会いたくなる。


手の届く所にあなたがいたら、きっと私は駆けてしまう。

会いに行ってしまう。

それじゃ、何も変わらない。