勢いよく顔を上げて、ニッコリと笑う。

ゴシゴシと涙を拭って、震える唇を持ち上げて、ニッコリと。

そんな私を見て、驚いた様に目を見開いた彼だけど、構わず言葉を落とした。


「私、九州に転勤になったの」


落ちた言葉は震えてなかっただろうか。

ちゃんと、言えただろうか。


目を見開いて瞳を揺らす彼に、変わらず微笑みかける。

大丈夫だという様に。

心配しないでと、伝わる様に。


「来月から、博多支所に異動になったの。私九州って行った事ないんだよね」

「それって・・・・・・」

「どんな所なんだろ。少しだけ楽しみなの」


尚も変わらずニコニコと笑う私の肩を、突然掴んだ彼。

瞳を歪めたその姿を見て、悲しくなる。

それでも、頬に笑顔を張り付けてニッコリと笑う。


「今回の事が原因で・・・・・・?」


擦れた彼の声を聞いて、微かに瞳を細めた。

その姿を見て、どうか泣かないでと思う。

辛い気持ちは、全部私が引き受けるから。

元の幸せな生活に戻って、誰よりも幸せでいてと思う。