どうしても、聞きたい事があった。

ずっと聞きたかった事があった。

今聞かなきゃ、きっともう聞けない事――。


「最後に・・・・・・聞いてもいい?」


そっと頬を上げて問いかけると、ピクリと眉を動かした一ノ瀬さん。

悲しいくらい愛おしいその姿に、ふっと微笑む。


目に、焼き付けておこうと思う。

忘れない様に、その瞳も、その唇も、髪も、指も、笑った顔も、全部。



――…もう、会えなくなっても。



笑顔でいようと思うのに、耐えきれずにポロリと涙が一筋頬を伝う。

幸せだった日々が脳裏に浮かんできて、胸が締め付けられる。


優しく私の名前を呼んで、そっと髪を撫でてくれた日々。

精悍な顔をくしゃくしゃにして笑う、無邪気な笑顔。

まるで子供のようにはしゃいで、一緒に笑い合った日々。


それらを思い浮かべた瞬間、喉まで出ていた言葉を飲み込む。

聞きたかった言葉が、喉の奥につっかえて出てこない。

そして、逃げるように瞳を伏せて自嘲気に笑った。


「・・・・・・ごめん。やっぱり、なんでもないや」



――・・・・・・私は、弱い。