そう思った瞬間、さぁっと血の気が引く。


「だ、大丈夫なのっ!?」

「え?」

「今も、誰かに見られているかもしれないって事でしょ?」


勢いよく彼から距離を取って、辺りをキョロキョロと見渡す。

そんな密偵みたいな事をされていたんだ。

という事は、今もどこで見られているか分からない。

だって、また会うかもしれないって普通は考えるはずだから。


顔を真っ青にして狼狽える私を見て、一ノ瀬さんは微笑んで見せた。

その姿を見て、キョロキョロと辺りを見渡していた顔を止めて彼に向き直る。


「大丈夫。つけられていないか、ずっと確認してここまで来たから」

「でもっ」

「会いたかったんだ」


真っ直ぐなその言葉に、胸が締め付けられる。

その言葉が嬉しくて、悲しくて、一気に泣き顔になる。


「ここに来たら、もしかして会えるかもと思った」

「――…うん」

「会いたかったんだ」


もう一度そう言った彼の言葉に、耐えきれずに涙が一筋頬を伝った。

同じ気持ちでいてくれた事が嬉しくて。

私の事、少しでも想ってくれた事が嬉しくて。

そう言ってくれた事が、嬉しくて。